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「世界戦でカエル跳び、あっち向いてホイも…」“伝説のボクサー”輪島功一80歳が明かす奇想天外なアイデアの秘密「本当はやっちゃダメなんだよ」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2024/04/06 17:04

「世界戦でカエル跳び、あっち向いてホイも…」“伝説のボクサー”輪島功一80歳が明かす奇想天外なアイデアの秘密「本当はやっちゃダメなんだよ」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

身振り手振りを交えてインタビューに応じるボクシング界のレジェンド・輪島功一。80歳を迎えてもなお“輪島節”は健在だった

「オレが東京に出てきたころは、金はいらないからメシだけ食わしてくれという時代よ。それでもいろんな仕事をして、やればやるだけ自分のものになるという請負仕事があったわけ。それで少しずつお金がたまって、自分のやりたいことをやる余裕が生まれたの。そんなときに、こんなことを言った人がいたんだ。『スポーツをやるやつに悪い人間はいない』とね」

“24歳のオールドルーキー”への視線は冷たく…

 都内の土木会社で力仕事をしていた24歳のとき、仕事帰りに人だかりができていたので覗いてみるとボクシングジムがあった。輪の中心にいたのは3年前に開かれた東京オリンピックで金メダルに輝いたボクサー、桜井孝雄だった。ピンとくるものがあった。少し余裕が生まれていた輪島さんはボクシングをやろうと決意した。ただし、その道のりは最初から平坦ではなかった。

「昔はさ、15、6歳でボクシングをはじめて25歳はもう引退なわけ。ジムに入って『よろしくお願いします』と言ったら、『おい、お前いくつなんだ』『はい、あと2カ月で25歳になります』『そうか、じゃあ、あっちのほうに行ってろ』。あの時代の25歳は選手になれる年齢じゃないんだよ。名前を出して悪いけどさ、オレと同い年のファイティング原田は19歳で世界チャンピオンになって、26歳で引退だからね」

 ここが勝負の分かれ道だった。「お前なんてボクサーになれない」と相手にされず、シュンとしてしまったらそれで終わりだ。輪島功一の伝説はここから始まった。

「あっち行っとけ、と言われたオレがどう思うかなんだよ。ああダメだ、と思うのか、今に見てろよ、と思うのか。聞くほうの問題なんだよ。だれも相手にしないのを、相手にせざるを得ないようにしていく。真面目な人間だと思わせる。そういうところ、輪島は頭がいいんだよ(笑)。

 そもそもね、年が年なんだから、人が1年かけていくところを2カ月、3カ月でいかないといけない。人の2倍も3倍も濃い練習をしなくちゃいけない。結局ね、無理ができるかどうかなんだよ。無理が通れば道理が引っ込むという言葉があるでしょ。無理のできない人間は絶対に上にいけないんだよ」

【次ページ】 「カエル跳びなんてね、本当はやっちゃダメなんだよ」

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