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藤井聡太21歳が“八冠保持”より「第一に考えている」ことは…「振り飛車のスペシャリスト」菅井竜也31歳との王将戦で見せた正確無比さ 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2024/01/10 17:00

藤井聡太21歳が“八冠保持”より「第一に考えている」ことは…「振り飛車のスペシャリスト」菅井竜也31歳との王将戦で見せた正確無比さ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

第73期王将戦7番勝負の第1局に臨む藤井聡太八冠(手前右)と挑戦者の菅井竜也八段(代表撮影)

 12月中旬には東京の将棋会館で、藤井と永瀬の練習将棋が公開された。新将棋会館建設への寄付金の返礼企画で、数十万円を提供した支援者15人が特別対局室でじかに観戦した。写真に写った観戦者の多くが女性で、この企画は申し込み開始から30分で完売したという。

 藤井と菅井は正月明けの1月4日、ABEMAトーナメントの収録で初仕事を行い、年末年始について次のように語っている。

「5日ほど休んで少しのんびりしました。王将戦の開幕に向けて、今は7、8割くらいの気持ちの準備です」(藤井)

「4、5日くらい休みました。将棋に集中するのは、対局が始まる数時間前からでいいと思っています」(菅井)

菅井が語った「今は評価が低い振り飛車を信じて」

 王将戦第1局の対局場となった「ホテル花月」は、2007年の第56期から引き続いて行われてきた。私こと田丸九段は2017年と19年に立会人を務めた。窓外に見える那珂川の景観が美しかった。第7局に設定された昨年は、藤井王将が羽生九段の挑戦を4勝2敗で下して初防衛したので行われず、後日に同ホテルで祝賀会が開かれた。

 そんなこともあって、別のホールで開催された第1局の前夜祭には、県内外から700人もの将棋ファンが集まる盛況ぶりだった。藤井と菅井は王将戦に向けて、記者会見などで次のように語った。

「振り飛車のスペシャリストの菅井八段との将棋では、中盤でバランスをいかに保っていくかが大切になる。八冠を長く保持したいとは思っていない(記者の質問に答えて)。それぞれのタイトル戦にしっかり臨むことを第一に考えている」(藤井)

「藤井王将に対しては、精一杯に頑張るだけです。自分を応援してくれる振り飛車党のファンの人たちのためにも、自分自身のためにも、今は評価が低い振り飛車を信じて、十分に通用するんだということを結果で示したい」(菅井)

 なお主催者のスポーツニッポン社長は「今年は辰年。竜の名前が入った菅井八段には、タイトル獲得を目指してほしい」と、挑戦者を激励する異例の挨拶をした。

叡王戦でも菅井が主流とした「三間飛車」

 王将戦第1局の時点で、両者の対戦成績は藤井の9勝4敗。直近では藤井が3連勝している。

【次ページ】 第1局1日目、両者は「静」の状況が続いた

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