「新日本プロレスが世界一」を証明するために

　内藤は「堪能させる」と余裕を崩さないが、辻も笑みを絶やすことはない。

　NJC優勝翌日、辻はベルト奪取後のプランを披露した。IWGP世界ヘビー級王座を分裂させ、インターコンチネンタル王座を封印し、あらためてIWGPヘビー級王座が最高峰であると定義する。2冠王者になることは成し遂げた内藤だが、統一は自身の敗戦により阻止できなかった。内藤ができなかったことを自分が行うことで、内藤より上の存在だということを示すと同時に、新日本プロレスの価値を明確にする。

長岡のリング上で同門の内藤哲也と対峙する辻陽太　©Masashi Hara

　仮にそれを成し遂げたならば、その先に更に大規模な再定義が行われるだろう。辻は「セルリアンブルーのリングが世界一のプロレス」と言う。WWEやAEWは資金力で上を行くが、だからといってプロレスの価値で下に位置づけられることは受け入れがたい。

　その中で、実現しないまま終わってしまったかに見えた戦いが繰り広げられる可能性もある。オスプレイへの嫉妬を晴らすことや、オカダを超えてみせること。その機会は突然消えてしまったが、永遠に失われたわけではない。新日本プロレスの”新時代の象徴“になる覚悟を結果で示し、ファンに夢を見せ始めている辻ならば、然るべき機会が自然と巡ってくるかもしれない。

NJCの優勝トロフィーを高々と掲げた　©Masashi Hara

　新時代の象徴になる覚悟を結果で示してみせた2024年の春男は、こう叫んだ。

「なあ新日本プロレスよ。覚悟はいいか？」