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オープン戦最下位でも…“今年で勇退”のOB会長・川藤幸三が目を細める理由「あの時に思ったわ。お、岡田変わったな、と」指揮官に重ねる名将の面影 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/03/26 11:02

オープン戦最下位でも…“今年で勇退”のOB会長・川藤幸三が目を細める理由「あの時に思ったわ。お、岡田変わったな、と」指揮官に重ねる名将の面影<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

球団史上初となる2年連続日本一を目指す阪神・岡田彰布監督 

岡田監督のある“変化”

 カワさんがうなった「湯浅の1球」は岡田一流の演出だった。かつてないほど鮮やかな用兵であり、岡田が指揮官としての名声をさらに高めた瞬間でもあった。

 昨季は岡田にとって15年ぶりの古巣復帰となるシーズンだった。そのなかで、振る舞いにも変化が見えたという。

「初めの監督時代(04~08年)は、なんでもかんでも自分が前面に出んかったら、納得いかん性格やった。今年はヘッドコーチの平田勝男とか、ピッチングコーチをうまく使えるようになった。一人の力では無理だということを分かっているんだろうな」

 前回優勝に導いた05年当時はトップダウンを極めていた。打順や投手起用など、すべてをコントロールしていた。だが、今回は周りの声を生かしながら、チームを作っている。

岡田監督の監督像とは…

 タイガースは来年、球団創設90周年を迎え、これまでに多くの個性派監督がチームを率いてきた。吉田義男、野村克也、星野仙一……。岡田の「監督像」が話題になると、カワさんは感慨深げに言う。

「岡田は、ワシにはな、藤本のおじいちゃんみたいな感じのものがある」

 昔の話になる。「藤本のおじいちゃん」とは61年途中から68年まで指揮を執った藤本定義のことである。巨人の草創期に優勝を重ね、阪神でも62、64年の2度、頂点に導いた。両チームで指揮を執った唯一の指揮官で、監督実働29年はプロ野球最長記録。優勝9度を誇る名将である。

「おじいちゃんは、選手とめったなことで話をせんかった。ワシが唯一、声を掛けられたのは1年目。初めて使ってもらった日に甲子園の風呂場で一緒になった。『おい、川藤。どや、一軍のゲームは。疲れたか?』『いえ、疲れません』。『よし、明日も使ったる』。その1回だけや、監督と話したのは」

藤本監督の心配り

 その「明日」に、カワさんは高卒ルーキーながら、プロ初安打初本塁打の離れ業をやってのけた。68年、19歳の秋はショートを守る内野手だった。

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