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「ぼくはしあわせだな」白毛馬で史上初GI制覇、ソダシに関わった騎手&厩務員&調教師の証言「男泣きした」「背中をとおして教えてもらいました」
posted2024/03/08 06:01
text by
江面弘也Koya Ezura
photograph by
Keiji Ishikawa
白毛馬の遺伝
デビュー戦に向けて、ソダシの課題はゲートだった。母親のブチコはゲートをくぐり抜けて飛びだしたり、問題の多い馬だった。それが「頭をよぎった」という須貝はゲート練習は徹底してやったと言う。
「病気とおなじで、母の悪いくせが遺伝して、それを発症させてしまってはだめ。その手前でしっかり抑えておかないといけない。そこは調教師の責務です」
近親の白毛馬に乗ることも多かった吉田も「ゲートが心配でした」と言った。
「ユキチャンやシロクンもゲート内で頭を下げるそぶりがあったので、ブチコがそうだったのは、わかる気がしました」
反射神経は抜群にいい
ゲート練習では吉田が乗り、時間をかけてやった。今浪は振り返って言う。
「ゆっくり、のんびりと、隼人と一緒に考えながら練習してました。きょうはこのぐらいでやめておこうとか、馬が落ち着いてるから、もうすこしゲートに入れておこうかとか、話し合いながら練習していた」
その甲斐があって、ここまでソダシはゲートでは問題なくきている。それどころか、スタートダッシュは「こんなに速くでるとは思わなかった」と今浪が驚いたぐらいすばらしい。それを、吉田は「反応の良さ」だと言った。ソダシは物音に敏感なところがあるが、反射神経は抜群にいい。
デビュー戦は2番手からあっさりと抜けだして勝ったソダシは、それからは負けることなく勝ち進んでいく。スピードがあった。きれいな姿とは不釣り合いな力強さもある。そしてなによりも、競り合いに負けない勝負根性があった。桜花賞もサトノレイナスの追撃を首差しのいでみせた。その桜花賞、須貝は「感極まって、男泣きした」と言った。無敗の馬を管理する調教師としてのプレッシャーもあったのだろう。